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第99回 行き詰まりを打破する思考法

最近、農業で開業したいという人が増えているという話を聞きました。耕作放棄地の問題がクローズアップされて久しく、地方自治体が新規就農を促進する様々な施策を以前から打ち出していますので、「今、このタイミングでなぜ?」という印象です。想像するところ、長く続く自粛期間と先の見えないコロナ禍の影響で、「ここらあたりでサラリーマン人生にも一区切り」と考える人が出てきているのではとも考えられます。

農業、といえば、稼ぐのが難しいというのが定番のイメージです。だからこそ、農地を継ぐ人が減り、耕作放棄地も増えてしまった…という経緯があるのでしょう。ところが、調べてみると、耕作放棄地の面積はここ数年減少していて、企業の農業参入も容易になっている。若い方の新規就農が増えていて、経済的にもノウハウ的にも手厚いサポートが増えているようです。

でも収益はどう出すのか。家庭菜園でとれる野菜や安い輸入品に勝てるだけの競争力はどうやって手に入れればよいのか。

と思いながらネットを見ていると「体験農園」が増えていることに気づきました。昔からある、イチゴ狩りやリンゴ狩りやミカン狩りなどの収穫期だけの体験ではありません。「体験農園」は、種苗や植え替え、草取りから収穫まで、あらゆる段階の農業が体験できるビジネスモデルのようです。

ある農園では、そこでとれる野菜や果物は売らずに、「体験」のみを販売しています。野菜の育て方の講習や、土に触れる「体験」、家族一緒に楽しむ時間をパッケージにして「おひとり様、〇〇円」で販売しています。

別の農園では、お客さんが自由に畑の中を歩き回って、生っている野菜を収穫できます。収穫体験に課金し、あわせて、お持ち帰りの野菜を買ってもらっています。

販売するのものが「野菜や果物」から「体験」になったとたんに、家計の勘定科目が「食料品費」から「レジャー費」に変わります。「レジャー費」になると、ディズニーランドやキャンプに行くときの金銭感覚と同じになってくるので、スーパーで食品を見定める時よりもお財布のひもが緩みがちです。

「農作物を育てる」という本質は変わっていないのに、野菜や果物という「商品」として販売するか、体験という「サービス」として販売するかによって、収益が異なってくるということなのです。

農業の例で書きましたが、急速に普及が進む「シェアリングサービス」も同じ文脈で考えられます。月々ある金額を支払えば、スタイリストが選んでくれた洋服を数着借りられたり、ブランドバッグを借りられたり。客にとってみれば洋服を選ぶ手間も、コーディネートを考える煩わしさも、クリーニングの心配をする必要もなく、リーズナブルな価格で納得いく洋服が着られます。

商品を売るのではなく、サービスを売ることで、客との長きにわたる関係を作り、一人の客から得られる収益を最大化できるのです。

このビジネスモデルをProduct as a service(PAAS)といいます。ネットで検索すると、ミシュランがタイヤの「販売」から「レンタル」のビジネスモデルに移行し、走行距離に応じた課金方式に変えたとか、フィリップスがLED電球をリースで提供し、メンテナンス費用を含めて課金しているといった事例が出てきます。

「売り切る」のではなく「貸し」て、物の対価としてではなく利用量や期間に応じて「課金」する。それで、顧客との長い関係を築いています。やっていることはあまり変わらないのに、顧客との関係に一工夫することで、身動きがとれないほど行き詰まったかに見える事業にも、新しい稼ぎ方が生まれるのです。

「もの」と「サービス」は相互に行き来できます。上記が「もの」から「サービス」への移行例だとしたら、「サービス」を「もの」化して、新しい収益モデルを検討することもできるでしょう。

たとえば、研修サービスの動画化など。コロナ禍で対面の研修ができなくなった講師の方の多くが、研修の様子を収録した動画を商品として販売し、新しい商材と顧客の幅を増やしました。サービスの商品化の一例です。

さて大切なのは、いずれの例も、事業の中核部分は変わっていないということです。提供の方法、顧客との関係のつくり方にひと手間加えることで、今までとは異なるお客さんのお財布を発見したのです。

立脚点は変えずとも視点を変えることで新しい世界が見えてきます。ぜひ一緒に考えましょう。


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