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第68回 仕事を抱え込む社員の「責任感」

先日、とある社長と話をするうちに、仕事を抱え込む社員がいて困っているという話題になりました。途中経過の報告もなく、期日までに仕上がるかも不明。周囲に相談もしないので、様子がさっぱりわからない。「一生懸命仕事をする責任感がある社員なのだが…」と途方に暮れる様子です。

どこの会社にもあるお話しではないでしょうか。社員の側に立てば、下手に周囲に相談をすれば、自分の能力が低いと思われるかもしれないという不安やら、自分ひとりの力で完結したいという強い想いやらがありそうです。ところが、社長や部門のリーダーにしてみれば明らかに「困った社員」。でも、一生懸命にやっているようだし、そもそも仕事を囲い込んでしまっているので、手の出しようもありません。

社員にとってみれば、自分が与えられた仕事を完遂するのが「責任ある行動」なわけですが、会社にとってみると、その仕事には期日や求められる品質があるわけで、その要求事項に見合った成果を出すことが「責任ある行動」となります。教育的視点を除けば、仕事が完了することが最も優先すべきことであり、担当を振られた社員がすべてを全うするかどうかは二の次ということになります。

事業をめぐる環境が次々に変わり、誰にとっても初めてという業務に取り組むケースが増えています。となると、時として能力やスキルを超えた仕事を、社員に割り振らなければならないということも生じます。大体がやったことがないわけですから、その人で完結できるかどうかは上司にも社長にもわかりません。となると、その仕事を振られた社員が自分ひとりで完結しようと考えるほうに無理があり、そこは他の人の力を借りて何とかするという選択肢も視野に入れたほうが得策なわけです。

これまでの会社のなかでは、担当の仕事を自分ひとりで完遂することが「責任ある行動」と思われてきました。ところが状況は変わっています。ビジネスのスピードも上がっています。一人でやってしまおうと考えれば考えるほど深みにはまり、誰にも相談できずメンタルが危うくなってくるリスクさえあります。

ここは「責任」の定義をし直す必要があります。自分ひとりで手に負えなければ潔く他人の助けを借りるということも含めて「責任ある行動」とするわけです。そして、そのことを組織全体で合意することが大切です。

とかくまじめな人ほど、自分ひとりの力で何とかしようと思い、悩んだあげく、対処すべき問題の大きさに負けて折れてしまいます。結果として、仕事は完了せず、会社全体にとってみればリカバリーに余計な手間と時間がかかることになります。

現在は、過去当たり前と思ってきたさまざまな認識を転換すべき時です。その一つに「責任感」もあります。それを組織全体の合意事項としていくことで、新しい物事に対処するときの潜在能力が上がっていきます。

会社のなかでどうしても解決できない問題があったら、それは旧来の認識を転換すべき時に来ているというサインです。貴社では気付いておられるでしょうか。そして何らかの手を打ち始めているでしょうか。


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