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第60回 話し合いがうまく進まないときに起こっていることとその対策

先日、とある中小企業でマネージャーを務める友人から「新しい事業を始めることになったが、話し合いが全くうまく進まない」という愚痴ともつかない相談を受けました。聞くと、営業、サービス、経理など各担当の意見が全く噛み合わないとのこと。各自が、新たな事業を始めるにあたって、自分の分野で起こるであろう困りごとを話すばかりで、一向に着地点が見えないという様子が伺えました。

ITをはじめとする技術の変化が激しく、顧客の嗜好も時間の経過とともに大きく変わっていくこの頃では、それに遅れまいと新しいことを始める会社も増えています。例えばSNSで情報発信を始めるというのもその一つ。いくらプライベートでやったことがある人がいたとしても、会社としては初めての経験なので、関係する部署がそれぞれの視野の中で発言することになりがちです。広報担当者は「週に1回は新しい情報発信が必要」と言い、現場は「1週間に1回、新しいトピックを見つけることなどできない」と言い、管理者は「発信する情報の原稿チェックを週1というスピードで誰がやるのか。この忙しいのに……」と懸念を示す、という具合。

それでも声の大きな人、主導権を握りがちな人の意見に押されて、結論らしきものは出るものの、全体の同意が得られていないために、やはり実行段階で障害が生まれてしまう……。

考えられる原因は、それぞれの人が自分の視野から出ることなく議論を進め、無意識のなかで自分の利益を最大化する、または自分の不利益や不安を最小化しようとしているところにあります。さらには、新しいことを始める目的を全員が共有していないために、自分の利益・不利益の枠から踏み出して議論をする必要性を、誰も感じていないところにあることもあります。

夜暗い道で車を運転していると、時速60キロを超えたあたりで急激に視野に狭まる、つまり、視野の周縁で見えるはずの歩行者が見えなくなる、と言います。これではいくら歩行者がドライバーに目立つように体にたくさんの反射板をつけていても、身を守ることはできません。ところが時速を40キロ程度に落とすと、視野がぐっと広くなり、急に横断してくる歩行者にも気付きやすくなるということです。

会社の中で話し合いがうまく進まず、ことばが上滑りしているような時は、一回、ペースダウンをして、何のための話し合いかを確認することが大切です。新しい事業を始めるなら、会社の存続のためとか、他社に負けないアピール力を身につけるため、といった理由があるはずですが、意外にこれが共有されていないことがあるからです。

そしてもう一つ大切なのは、他者の視点にも立ってみると言うことです。誰もが自分の「正義」に立って話をしているはずですなのですが、その「正義」が人によって、あるいは担当によって異なっているのです。他者の視点に立ち、他者の「正義」を理解しようとすると、発言の背景がわかってきます。

なぜ現場は「週に1回のトピックを見つけるのは難しい」と主張するのか。それは、普通にうまく回っている会社では、特段目立ったことなど起こらないということを現場の人たちは知っているからです。だったらどうするかをみんなで考える。そこから解決策が生まれてきます。

今の世の中、問題に対してパーフェクトな解決策を提供する「正解」は存在しません。あるのは、関わる全員が前向きに行動を起こすことのできる「最適解」を見つけることだけです。その時に必要になってくることが、ゴールの共有と、他者の視点にも立ってみようという思考なのです。

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