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第57回 社員を「個人事業主」にするとどうなるか。

先日、独立前に勤めていたオフィスビルに用事があっていったところ、本当に久しぶりにヤクルトのお姉さま(ヤクルトレディ)にお会いしました。相変わらずヨーグルトやら乳飲料やらを満載したバッグを重そうに下げて、オフィスごとに声をかけておられる。オフィスによっては、ヤクルトレディの「おはようございます~」という元気のよい声が聞こえてきても「しーん」と静まり返っていたりして、いたたまれなくなって「ヤクルト1本で、すみません」と、小さな声で買いに行ったりしたことを思い出しました。

さて、このヤクルトレディが、「個人事業主」であること、ご存知でしょうか。ヤクルトのホームページを見ると、扶養の範囲内で働きたい女性などに適したワークスタイルとして紹介されています。働く側も雇用されて生じる時間的なデメリットよりも、自由に時間を選べて家計の足しになる収入が得られる点を評価しているようです。

最近の似たような話題で、タニタの食堂でおなじみの株式会社タニタが、正社員を「個人事業主」にするという試みを始めたことが話題になっています。「タニタの働き方革命」という書籍、書店で目にした方もおられると思います。書籍の帯には「会社員とフリーランスのいいとこ取り」という魅力的な言葉。タニタがヤクルトレディと違うのは、正社員という安定した立場を「個人事業主」にスライドするという点です。正社員のある意味「特権」のようなものを相当程度維持したままで、時間の自由や裁量が無制限に広がる個人事業主に移行しようというのです。

この書籍に描かれている個人事業主化のメリットで興味深いものが2つ。

一つは明らかな経済的メリットです。これまで自己啓発などにプライベートな資金を充てていた社員が個人事業主になると、これらの研修費用や交通費なども「経費」として計上できます。その結果、手取りが100万円単位で増加。

もう一つは「働き方改革」下の不完全燃焼感の解消です。残業もいとわず、仕事のあらゆる機会を活用して自分磨きをしようと意気込んで入社した社員が、「働き方改革」の名の下で「残業禁止」を言い渡され、モチベーションを失っていたとしたら……。ところが個人事業主であれば、約束した成果を出せば働き方は自由です。自分磨きをして、能力や人脈が拡大すれば、それに応じてまた仕事を広げられます。

正社員を個人事業主にする制度、その導入にあたっての混乱やご苦労もあっただろうと想像するのですが、人生100年時代に、会社と社員が長期的に良い関係を築いていくためには、今までの常識を超えたこうした試みは、いろいろなバリエーションで広がっていくと思います。ただ一つだけ注意したいのが、制度先行にならないこと。個々の会社の背景や目標や社員マインドなどを踏まえて検討した結果がかたちとなるように設計していく必要はあります。