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第121回 時代の移り目に妄想のススメ

お正月明けにお会いしたIT業界の方から「いま世の中の景気はどうなんですかね」と尋ねられました。

ニュースで見るように首都圏の飲食業は本当に大変そうですが、地方都市の郊外ではこのタイミングで飲食店を開業する人もいます。昨年暮れには自動車販売数が回復基調に戻ったというニュースも聞こえてきました。年明け早々から、夜遅くまで稼働する工場の音が聞こえる地域もあります。

半年ほど前に開店したあるスイーツ店も思いのほか好調で、オーナーは寝る間も惜しんでスイーツを作り続けています。店を手伝う奥様は「つくるそばから売れていく」と嬉しそうに話されます。コロナ禍で生まれた巣ごもりニーズに図らずも乗ったのです。

仕事柄、オンラインセミナーを開催する側に立つことが多いのですが、オンライン配信をサポートする業界の活況ぶりは目をみはるばかりです。コロナ以前から動画の制作や配信を生業としていた業者さんのところに、昨年の夏ごろからオンラインセミナーのサポート依頼が殺到。あれよあれよという間に売れっ子業界の様相を呈しています。

飲食店でも新しいトレンドが生まれています。その一つがゴーストキッチン。テイクアウト、デリバリーに絞った新しい業態で、調理スペースだけからなる店舗です。レストランの機能が食事と飲食スペースを提供することだとしたら、食事提供の機能だけに絞った業態とも言えます。

こんな風に、商品やサービスが顧客に提供する機能を分解して、その一部を削ぎ落としたり、 別の機能を付け加えたりしたらどうなるかを妄想するのも面白いものです。

例えばスイーツであれば、昨年のクリスマスに一風変わったクリスマスケーキが売り出されました。スポンジ、生クリーム、サンタやヒイラギのデコレーションなどケーキを構成するパーツがバラバラになっているケーキ。プラモデルを組み立てるように、購入した家庭でケーキの組み立てができます。

これも巣ごもり消費を見込んだもので、コンセプトは「おうち時間を楽しむ」。ケーキを食べる楽しみに加えて、ケーキを仕上げる時間、経験、そして誰かと一緒につくる思い出までも提供しようというものです。

このサービス、スポンジやクリームなどの組み合わせが選べるようになっていれば、セミオーダーメードケーキの手作りキットにもなります。やり方は、パソコンを買う時に、用途に応じてCPUやメモリ、OSを選ぶのと同じ。子供たちは自分が好きなクリームやフルーツやサンタさんが選べます。お母さんがスポンジから焼かなくても、手作りの時間を楽しめます。

バブル崩壊、震災、リーマンショック、そして今回のコロナと、10年単位で必ず訪れる時代の移り目。そのたびに、価値観が切り替わり、新しい技術が生まれ、その波を上手に捉えた人たちが新しい事業を育てていきます。

新しく生まれたニーズに応えるために、既存事業の前提のいくつかをいったん外し、思考の制約のないところから妄想を広げていきます。

ところが、思考の制約をはずすことは、言うほど簡単ではありません。いくら考えても、いつもの思考のパターンに戻ってしまい、新しい考えのサイクルに入っていきません。

だったら、「いままでの事業や仕事がまったくゼロになってしまったら、自分は何をしたいか」から考えてみてはどうでしょう。

既存の事業や価値観が足かせになっていることはよくあります。いったん「自分」に戻って、内側にある声を聞いてみるのはどうでしょうか。よそゆきの自分ではなく、素にかえった自分が何を言うのか、問いかけてみるのはどうでしょうか。

妄想は人を自由にします。ぜひ一緒に考えましょう。


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