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第119回 まだ椅子取りゲームやりますか?

先日、ある経営者と話をしていて、この春、コロナ禍の渦中でだいぶ売上が下がったという話題になりました。「それで、どうやって挽回したんですか」と聞くと、「もう開き直って、好きなことをやり始めたんです」と仰る。実はこのお店、特徴のある商品づくりでファンも多かった。であってもコロナ禍の影響は免れ得ず、当初は向かう方向が見つからなかったと。

他の店が何をやっているかをリサーチしたり、ウエブや本で情報を集めたりしたものの、これといった打開策が見つからない。万策尽きて開き直り、前々からやりたかったことをやり始めたら、お客さんが戻ってきてくれた、という話です。

何かうまくいかないことがあると、大方の人は外に答えを求めます。同業のマネをしてみたり、異業種のやり方の中から応用できることはないかを探してみたり。それはそれで何らかの成果はあるはずです。一方で、経営者の中に眠る暗黙知というか、好奇心というか、直感みたいなものを頼る方がうまくいくケースがあることをたくさん見てきました。

平たく言うと、経営者の自分軸みたいなものです。そこに依拠して計画を立て実行する。そのメリットは第一に他社とは異なるオリジナルなものになるということ。それはそうです。業界は同じでも経営者のパーソナリティや興味関心は異なるわけですから、当然、他とは異なる独自性が生み出しやすくなります。

メリットの二つ目はやる気が出る。自分の関心を中心に動くわけですから、他社のマネをするとか、誰かからアドバイスされてやる時よりも没入できます。組織を動かすときも説得力が出てきます。

その際の最大の心配事は、お客さんに受けるかどうか。

マーケティングの教科書は、まず顧客を想定し、その好みや課題に合った商品やサービスを提供するべし、と教えます。だから、当初からお客さんを無視した商品やサービスを提案するのは無謀といえば無謀。

作れば売れた時代の成功体験を持つ社長が、大枚はたいて商品を開発し、さぁ売ろうという段で売り先が見つからず、在庫の山を抱えたという笑えない話もよく聞きます。顧客想定のない商品・サービス開発のリスクは多くの人が指摘しています。

「だから少しずつやるんです」と私はいつもいいます。

リスクを最低限に抑えられるように、お客さんの反応を確かめながら少しずつ始める。最初は試作から、徐々に数量を増やして、定番商品にまで持っていく。

もう一つ、これは声を大にして言いたいのですが、SDGsのゴールのいずれかに紐づけておくことです。直感で行けると考えた商品やサービスも、もしかしたら「大外し」かもしれません。他方、SDGsは人類がこの先10年で対処すべき課題を掲げているわけですから、そこにリンクを持っていれば「大外し」になる可能性はぐっと引き下げられます。加えて、支援者も集められます。運が良ければ未来の顧客も寄ってきます。

既存のビジネスはほとんどがレッドオーシャン。言い換えれば椅子取りゲーム状態です。決まった数の椅子に座れるか座れないかを競うのも悪くはありませんが、誰かが座れば、他の誰かが座れなくなります。

最大の競争戦略は戦わないこと。他社とは異なる自社の軸を持つことが、椅子取りゲーム脱却の第一歩です。そのためには社長の内なる野望、直感、暗黙知が必要です。ぜひ一緒に考えましょう。


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