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第115回 ブランディングに逆らう甘いワナ

先日、知り合いの女性経営者と話をしていたら、こんな愚痴が出てきました。

「所属している団体のPRに協力して、自分の動画撮影を承諾したが、できてきた動画が自分のイメージと違う。今さら、ダメとも言えないし……」。

男性もそうかもしれませんが、女性は特に自分のイメージにこだわります。経営者や個人事業主を専門に撮影するカメラマンもいるくらいですから、その需要の大きさは容易に想像できます。

だいぶ昔の小学生の頃は「人は外見じゃない、中身で勝負」とさんざん言われましたが、「人は見た目が9割」という書籍がベストセラーになったあたりで、学校の教えと社会の常識の違いをうっすらと感じ始めました。

極めて個人的な印象ですが、女性も年を取ると、自己イメージと外見との差が出てきます。以前、ローカル新聞に取材されて、顔写真が紙面に掲載されたとき、大いにショックを覚えて二度と見なかったことを思い出します。

思い返せば、あのときの若い男性記者さん、威厳ある女性コンサルタントの写真を撮ろうと、私の顔を下からあおって撮影したのです。威厳はあったかもしれませんが、二重顎も写りました。

ところで、ブランディングとは、会社や事業の好ましいイメージをターゲットとする顧客層に伝える一連の活動を指します。ブランドの語源は、牛の焼き印。質の良い牛肉の証明として印をつけておいたのが始まりです。

企業や事業のブランドはその所有者から発信されますが、その意図通りにキャッチしてもらえるかどうかは受け手次第というところがあります。よく「ブランドは企業と顧客の間にできるイメージ」と言われるのは、そういう理由からです。

さて冒頭の女性経営者ですが、実は動画撮影に同意した背景には、「自分のPRにもなるし」という動機もありました。自分のPRにもなり、所属する団体のPRにもなるのであれば、一挙両得。言うことはありません。抜けていたのは、そこで描かれるイメージを自分でコントロールできないという事実の認識でした。

先にも書きましたが、ブランドは発信者と受信者の中間にできるイメージなので、完全にはコントロールできません。しかも受け手のコンディションをこちらがすべて理解しているわけではないので、100%意図通りに伝わることはまずありません。

しかしながら、発信時点でのイメージはコントロールできます。それが自分の管理下に置かれていれば、です。

二重顎の写真が新聞に掲載されたあと、私も別の女性経営者に泣き言を言ったことがあります。彼女は毅然として「写真撮られたら、絶対、その場で確認すること」と言い放ちました。そして「気に入らなかったら、撮りなおしね」と。

たとえ、それが、誰かのための、お金を払っていない撮影でも、自分のブランドは自分で守りなさい、それが彼女の教えだったのです。

なんだか懐かしい思い出です。冒頭の女性経営者の愚痴で思い出しました。

ちょっと今回はいつもと違うお話しで、失礼しました。


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