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第103回 お客様は神様なんかじゃない

先日、外国籍の方と話をしていて「日本人にとってお客様は神様ですよね」と言われました。「確かに昔はそんなことを言っていましたが、今はそんなことないですよ」と私。その先、会話は発展せず、そこで終わってしまったのですが、確かに、かつて、「お客様は神様です」の時代はありました。

お客様の言うことは何でも聞いて差し上げるべきだし、会社に多少の無理がかかってもみんなで頑張れば「お客様満足を勝ち取って固定客になってもらえる」という道理がまかり通っていたわけです。

急激な変化が起こったのは、働き方改革が言われ始めた頃からです。

お客様の言うことを何でも聞き、その利便性を最大化した結果、宅配業は荷物を配達するために何度も留守宅に出向かなければならなかったし、顧客が就業時間を過ぎて電話をかけてきても、きちんと対応するのが多くの会社の望ましい客対応のやり方でした。

それが会社のブラック化を促進してしまった。

残業が当たり前になり、無駄足を何度も踏むことで社員はすり減り、メンタルがやられ、会社の士気が下がるという悪循環にはまってしまったのは記憶に新しいところです。

だから「お客様は神様です」思想は、社内に無理をさせて利益を勝ち取ることの是非を論じる前に、働き方改革の圧力のなかで、真っ先に排除するべきビジネス慣習となりました。

そのおかげで、いまや宅配会社は領収サインなしでポストに荷物を入れて配達完了してもよいことになりました。企業や学校は5時や5時半の定時ぴったりで電話対応をやめ、留守電メッセージを流すようになりました。この流れは対面での会話を嫌い、勤務体系が変化したコロナの時代になってさらに加速しました。

では、なんでも言うことを聞くべき対象であった「お客様」は「神様」から何になったのでしょうか。「お客様」を何ととらえれば、この先の利益が保証される事業展開が可能なのでしょうか。

宅配業に例をとれば、発送元の客と荷物を届ける先の客の両方に対して、「領収サインなしで荷物を届けても問題ないですよね」という了解をとりました。つまり万全を期していた配達慣習を少し緩め、働く人の事情とバランスを取り始めました。

定時過ぎの電話対応も同じです。「定時過ぎて電話を掛けてこられても、こちらは対応しませんが、いいですよね」という了解をとりました。「なぜなら働き方改革をしなければならないからです」と。

多少のクレームはあったものの、これが大方すんなりと世の中に受け入れられたのは、「働き方改革」という錦の御紋に社会全体が合意したからです。それが、働く人の環境を改善し、働き手のバーンアウトを防止し、社会に必要な機能を維持するのに必要だということを、かつて「神様」であったお客様が了解したからです。

会社とお客様の関係は、かつては一方通行でした。会社が良いものを作り、お客様は良いものであれば一方的に受け入れる。

このワンウエイの関係に、逆方向の矢印が加わりました。会社が良いものを作るために、お客様は会社の環境整備に協力すると。そして関係が双方向になった。いわばパートナーになったわけです。

それはコロナ禍で苦しむ飲食業の苦肉のテイクアウトを毎日購入して、お金を循環させた心ある消費者の姿に象徴的に現れています。

SDGsの12番目のゴールに「つくる責任、つかう責任」という文言があります。

企業が自社の製品に責任を持つのは当然のことなので「つくる責任」は理解できる。なじみのないのは「つかう責任」の方です。これは、消費者も「社会や働く人に負荷をかけない製品を選び、つかう責任」があるという意味です。

お客様に選ばれるためには、製品やサービスの品質や機能が優れていることは最重要項目です。いくら高邁な思想に裏付けられた製品であっても、顧客が求めるレベルよりはるかに劣った性能や品質であれば、買ってはもらえません。

それに加えてもう一つ、企業のあり方、思想のようなものが、選ばれる条件として重要になります。貴社にとってそれは何なのか。どうすればお客様に理解してもらえるかたちで提示できるのか。ぜひ一緒に考えましょう。


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