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第38回 会社と小学校で「気づく」ということをもう1回考えてみました。

先週、まったく異なる2つの場所で、「人の気づく能力を育成するには」という問いに出会いました。最初は、とある中小企業で。2回目は小学校で。いずれも「気づく能力を育成するのは非常に難しい」という文脈です。

気づく能力を育成するのが難しいのは、それが普段とは違う気持ちの構えを必要とするからでしょう。小学校で一方的に授業を受けているだけの子供は、気づきに出会いにくく、企業で言われるままに仕事をしているだけの社員も、たとえ何かイレギュラーなことに出会っても、意識化する前に打ち消して「なかったこと」にしてしまいます。

全く違う話ですが、あらゆるものがネットにつながり収集されたデータがAIで分析されて最適解が提示されるというIoT(インターネットオブシングス)の世界では、分析側の知能であるAIと同じくらい重要なのが、情報を収集するセンサです。このセンサが実は人間でいうところの「気づく」機能を果たしています。

センサは決められた情報を機械的に集めているので、気分や状況によって大きく左右される人の能力とは比べようもないのですが、センサが情報を集めなければ、最適解を出すことができないという点は注目すべきと思います。つまり、組織において人が、変化する状況に気づいて、それを意識化できなければ、環境変化にうまく対応できないリスクが高まるからです。

もちろん売上や利益、顧客数や客単価などの定量データは環境変化を表す重要な指標です。しかしこれらは実は結果を表す指標であって、結果に影響を与える重要な要因を特定することはできません。要因の特定は人の気づく能力にかかっています。

毎日同じことを繰り返すだけの生活は、過去の記憶をダウンロードして自動対処すれば難なく過ぎていきます。そこには新しい発見もないかわりに大きなリスクもなく、生命の維持の観点からすれば望ましいものに感じられます。ところが、人の認知には限界があり、自分の視野外で大きな変化が起こっていても気づかぬことが多く、気づいた時には生命の危機が迫っているという現象にも見舞われるわけです。すると、安全圏にいると思っていた自分が、世界で一番危険な場所にいたということもありえます。よく言う「ゆでガエル現象」もその一つでしょう。

気づく能力を育成するには、まず、気づける環境に身を置くことが必要です。たとえば多様な意見と出会う場所、ルーティンからはみ出た方法、新しい発想に基づくトライなど。そして、非常に微妙な話にはなりますが、「気づいて他人と違うことを言っても大丈夫」というメッセージを送ることです。

会社の上司にとっても学校の先生にとっても、実はこれが一番怖かったりします。イレギュラーに対処できないとき、どうするか。そのまっとうな心から出てきた意見が、仕事の効率を削いだり、会社の方針と逆行する方向に働いたら、どう対応すればよいのか。ここにゴールを共有することの意義が現れてきます。