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第200回 起業とキャリアの新しい流れについて

先日の日経新聞に「副業禁止なら理由公表」という見出しの記事が大きく掲載されていました。覚えている方もおられると思います。少し前から徐々に表舞台に出てきた兼業・副業が、ここにきて大きく一歩を踏み出したようです。

過去10年近く、本当にたくさんの起業を目指す人に会ってきた目で見ると、兼業・副業は可能であればやったほうがいい。人生のどこかの地点で絶対起業しようと思っているのであれば、なおさらです。その方が圧倒的に人脈は広がるし、知識も知恵もつく。勤め先の仕事だけでは閉塞しがちな思考を広げてくれるし、自分の可能性に気づくことも、また逆に、自分がどれだけ井の中の蛙だったかということに気づかされることもあります。いずれにせよ、視野が広がるという観点からは歓迎すべきものと思えます。

対して、企業側の立場になってみると、若干ビミョーな感覚に陥るのも否定できません。社員が勤め先の仕事のなかで手に入れた知識やノウハウを、別の場所で使うのは釈然としない、そんな感覚も理解できます。「この会社に貢献してもらうために、お金をかけて研修に行かせたじゃないか。それを、自分のフトコロに入れるつもりか?」みたいな感じ。

どうも「兼業・副業」といったとたんに、現在の勤め先に砂をかけるようなイメージが浮かび上がってしまうようです。実際に、独立・起業を考える人の相当数が、勤め先の社長とトラブルになったとか、人間関係がうまくいかないとか、自分が生かされていないとかいう、後ろ向きの理由を掲げているのも事実です。この認識がどうにもいけないのです。

現在、「兼業・副業」を推進している企業の多くは、社員研修の延長線上でこれらをとらえています。自分の会社の同じ価値観のなかにとどまってぬくぬくと過ごすのではなく、違う価値観、環境で仕事をする人たちと「他流試合」をすることで、スキルや能力だけでなく、人格や器も成長するという期待を込めています。

そして、こんな風に、自分自身を育てるために「兼業・副業」をさせてもらえる人は、現在の勤務先に砂をかけるようなマネはほぼしないと考えられるのです。それどころか、自分の能力を伸ばす機会を「兼業・副業」という形で与えてくれる器の大きさに感謝する。だとしたら、「兼業・副業」=「離反、謀反」みたいなイメージにはなりえないはずです。

手軽な「兼業・副業」として多くの人が登録をするクラウドソーシングのサイトを見ると、本当に安い金額で仕事を請けている人たちがいます。それも定期的に仕事をしているわけではないので、収入はほんのわずか。でも、そこで得られるもの、自分の足で立っている感覚というのは金額ではないところで価値を生み出しているのだと思います。

どんな関係も、相互作用から成り立っています。会社と個人の関係も同じで、会社が個人に嬉しい便宜を図れば、個人も会社が嫌がることはしないはず。ちょっと性善説過ぎるんじゃない?という気もしますが、では、なぜ、本業以外の場所でお金を稼ぐことがNGとなるのかを改めて問われると、うまく説明ができません。もし本業以外の場所でお金を稼ぐことがNGとなる理由があるのであれば、それを予め契約やルールで回避するようにすれば済むことではないかという気がします。

さて、冒頭の新聞記事ですが、読み進めていくと、「働く人は勤め先を選ぶときに、副業のしやすさを判断材料にできるようになる。」とあります。事実、起業したいという方の中には、兼業・副業で起業をするために転職をしたという例がいくつも出てきています。頭の古い人にはなかなか受け入れがたい価値観の変化が大きなうねりとなって現れています。

だからこそ、働く人は、自分でキャリアを切り開こうという意思の有無で、人生の過ごし方、自分の磨き方が変わってくるとも言えます。また、社員に対してこういう大きな気持ちで接することができるかどうかが、これからの選ばれる会社の条件になってくるとも感じました。

兼業・副業とキャリアの問題は、どうにもまだ過渡期のようで、私自身もまだしゃきっとした結論が出せません。特に中小企業では毎日の仕事が忙しくて、そんな最中に「兼業・副業」などされたら、たまったもんじゃないとも思います。「働き方改革」で残業を規制しておいて、浮いた時間を別の仕事で稼ぐのか?と。

こうした問題は会社と社員の信頼関係にもつながるもので、実は「兼業・副業」問題を超えた要素を含んでいると感じます。長期的な視点で社員のことを考えているか、その成長を後押ししているか、それが回りまわって企業の利益や成長に結びつくことを理解しているかといった問いが突きつけられているとも言えます。

目の前の問題にだけ関わっていると、密かに現れつつある新しい競争に乗り遅れる恐れがあります。少しずつ視野をそちらに向けていく必要があります。


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