
「本当に世の中には誉め上手な人がいるものだ」と思った出来事がありました。その誉め方が真に迫っていて、まるで心の底からおっしゃっているように見える。「誉める」ことが「人をその気にさせる」うえで非常に重要なスキルであることを、我が身をもって体験した出来事でした。
時に、「いくら誉められても、ちっとも嬉しくない」というときがあります。誉め言葉の背後にヨコシマな下心が見えていたり、ちょっと意地悪なニュアンスが感じられたりするときです。そう受け止める私の方に問題があるのかもしれませんが(笑)、誉めて人を動かそうというのであれば、そこはしっかり心の底から演じ切る必要があると強く思った次第です。
教育心理学の分野で「ピグマリオン効果」という言葉を目にすることがあります。ピグマリオンとはギリシア神話の登場人物。現実の女性に失望した彼は、自分で彫刻した女神にほれ込み、生身の人間になってほしいと心から祈った結果、その願いが実現したという話。
転じて、他人から期待されると、人はその期待を受けて、その通りになっていくという意味で使われます。
他人を誉めるとか勇気づけるとかいうのは、ピグマリオン効果をもたらすものと感じます。相手の美点を誉め、やりたいと思っている方向性を示し、「あなたならできる」「あなたしかできない」と心から言う。すると、「自分ならできる」「自分しかできない」という気持ちが暗示のように沸き上がってきます。
ちょっと間違えるとマインドコントロールにもなりますので注意が必要ですが、相手のやりたい方向に背中を押すには適したやり方だと思っています。
仕事の関係上、私も、人を勇気づけたり、行動を起こしていただくために、それに適した言葉を使うことがよくあります。多くの場合、それは、相手がそうしたいと思っているのだけれど、何かの理由で踏み出せないというときです。
勇気がない。失敗が怖い。他人の目が気になる、などなど。それは恐怖心や羞恥心と結びついていて、なかなか一人では超えられないハードルです。
そういうときに信頼に足る人物から背中を押してもらえれば、すっと前に進めるはず。そして、その通りになっていく自分をイメージできるはずなのです。
豚もおだてりゃ木に登る、わけですが、木に登れば落ちることもあるわけで、あえて登らないという選択も大いにあります。が、せっかくおだててもらって気持ちよくなったなら、自分のなかにそちらに行きたい気持ちがあるのは間違いありません。
豚もおだてりゃ木に登った方がおトクなのは、何はともあれ、自分の中にある恐怖を超えて行動を起こすことができるからです。ときに思考をとめて流れに身を任せることも大切、ということです。
さて、次に、背中を押してほしい人は、どなたでしょうか?
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