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第186回 組織の絆を強める危機感の活用法

とあるところからセミナーの依頼を受け、久しぶりに中小企業白書を開いてみました。中小企業白書とは中小企業庁が毎年発行している中小企業の実態調査レポートのようなものですが、レポートよりもストーリー性があり、結構楽しんで読めるものです。

直近の白書はコロナ禍のトレンドを反映して、制約条件のなかで新しい道を見つけた中小企業の事例がいくつか並んでいます。

たとえば管楽器を演奏する人向けのマスクを開発した企業の事例や、巣ごもり需要の盛り上がりを受けて御影石でバーベキュー用の鉄板ならぬ石板を開発した墓石屋さんの事例など。コロナ禍でなければきっと生まれなかったような商品・サービスを見て、環境変化は新しい需要を生むことを改めて感じました。

そういえば、利用者が急減したタクシーが、客ではなく食事のデリバリーを始めたというニュースの記憶も蘇ってきます。従来の需要が減れば、いったんは頭を抱えることになるわけですが、そのあとに生じた需要をとらえて新しい展開へと発想を進める面白さを感じます。もちろん苦肉の策という側面は否めませんが、それでもどこかに楽しんでやっている気配があれば、こちらも嬉しくなります。

もう一つ久しぶりに手にとったのは「広告年鑑」。あまり大っぴらにしていませんでしたが、20代のころからコピーライターをやってきた私にとって、毎年発行される「広告年鑑」は大げさに言えばバイブルみたいなものでした。ところが、平成、令和と元号が変わるにつれて、広告を彩るコピーがなんとも即物的でつまらないものになってきてしまった。さらにオンライン広告たけなわとなると、言葉よりも動くビジュアルに重きが置かれて、言葉の存在は軽くなるばかり。

思えば昭和のコピーは味わい深かった。としまえんの「プール、冷えてます」の真似をして、麦茶を沸かした大きなヤカンに「麦茶、冷えてます」と書いた紙を貼り、何人がそれとわかるか試してみたこともありました。ほんと、懐かしい昭和です。

ところでZ世代と言われる若者たちに「昭和」がブームになっているそうです。トレンドは一定のサイクルで巡ると言われますが、その通り。世の中は両極端の間をいったり来たりするようで、素直な感情表現が乏しいドライな社会の次は感情したたるウエットな社会がきて、ウエットで情感あふれる表現が流行れば、またドライな時代が来るという具合。

最新の「広告年鑑」もコロナ禍で前代未聞の制約が人生に訪れた人たちにエールを送る広告コピーが多数掲載されています。いわゆる「エモい」というもの。リモート授業で孤独に耐えながら遅くまで勉強する受験生や、聴衆と場を共有できない演奏家や。制約があるからこそ生まれる共感がコピーの向こうに漂います。

コロナ禍以前は、共感するネタがなかったか、というと、決してそんなことはなかったはずです。若者の自殺や貧困の問題、ごみ問題も公害も、関連する人たちのなかでは大いに共感すべき問題でした。これらの問題とコロナ禍が圧倒的に違うのは、なんとまぁ、人類全体が同じ危機にさらされたという点です。それは、宇宙人が地球に攻めてきたというのと同じくらいの、誰もが感じざるを得ない危機であると。

それもインターネットが素晴らしく発達して、人類史上初めて、危機の情報を全世界が共有できるようになったからこそ起こったことだと思います。

だんだん話が大げさになってきましたが、申し上げたいのは、共通の危機感は矢面に立つ人たちの結びつきを強くするということです。さらには、その最前線で戦う人への共感をも養うと。

それと同時に今まで味わったことのない制約条件のもとであれば、経験や知識の多寡にかかわらず、誰もが意見を出せるはず。というか、そういう事態が起こったら、一人ひとりの知恵を出して何とか対処せざるを得なくなるはずです。上に立つ人がいち早くそういう環境をつくるのがいい。

「艱難辛苦、汝を玉にす」と言いますが、コロナのような制約条件やそれがもたらす前代未聞の危機感などは、組織の絆を強めるともいえるわけです。その理由は、そこに共通の動機とビジョンが生まれるからです。この危機を何とかしようという共通の動機と、こうありたいと願うビジョンです。

業績が良くて働く人が幸せな会社には必ず共通のビジョンがあるということを、なんども申し上げてきました。危機感や制約条件なくしても、関わる人のほとんどが当事者意識を持てるビジョンを創ること、これは会社のブランドづくりの第一歩とも言えます。ぜひ、ご一緒に。


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