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第144回 理解できない発想をつぶさないためのマインドセット

経営者や起業家の事業アイデアを聞いていて、「これは、ちょっと無理っぽいな」と思うことがよくあります。説明が論理的でなかったり、言葉が足りてなかったり、論拠が弱かったりなどが理由の時もありますが、10に1つくらいの割合で、発想が飛躍しすぎていて、こちら側の理解が覚束ない時があるのです。それが理由で良いのか悪いのかさっぱりわからない。

特にITや先端のテクノロジーを使って新しい事業をやろうという事業家たちの発想は、解決しようとしている問題自体には説得力がある。でもその解決方法が穴だらけだったり、常軌を逸していたりすることがあるのです。

発想はいい、だけど方法論が稚拙であったり、理解の範疇を超えていたりするとき。

私はいつもその人の発想の背後にあるものが何かを考えます。大方はその人固有の経験に根差しているのですが、それが出てくれば、周りを説得するストーリーを描くことができます。逆にそれが出てこないと、薄っぺらな思いつきに終わっている可能性を考えます。

時に理解できない事象に出会うと、頭からすべて否定してしまう人に出会います。発想がいいのなら、方法論をブラッシュアップすればよいはずなのに、全て一つにまるめてNGを出してしまう。そして頭から考え直せというのでは、言われた方も意気消沈。打たれ強い人ならともかく、志高い人ほど打たれ弱いこともあって、大切な資源を失うことにもなりかねません。

他人の言うことはどこ吹く風と、ひょうひょうと自分の道を追求する方であれば外野の声は気になりませんが、多くの人は他からの評価に揺れがちです。こういう人に限って、いろいろな人の意見を聞くので、さらに揺れます。

そう考えると、良いアイデアが利益を生み出すビジネスになるまでには忍耐が必要であることが分かります。もちろん、ぽっと出のアイデアが直接利益を生み出すことはあり得ません。お客さんとの会話や自分との対話や、時代の流れや偶然の出会いや、ひらめきやが相まって熟成されるまでの、ある程度の時間が必要です。

そして、その時間の流れに耐えうるだけの揺るがない信念のようなものが必要です。

すこし視点を変えて、会社の中を見てみると、「マイクロマネジメント」と呼ばれる管理の方法に同じ匂いを感じます。マイクロマネジメントとは、「上司やリーダーが部下や新人の行動を細かく管理・チェックし、過干渉してしまうマネジメントのこと」。本来は、業務の目的に向かっているかどうかを管理すべきところ、その手段や行動にフォーカスして、その良し悪しだけを管理してしまうことを指します。

これも考えようによっては、上司が理解しうる範囲に部下の行動を制限する行動とも言えます。これで「新しい発想をもってこい」と言われても、部下にしてみれば「無理です」と言わざるを得ないでしょう。

コンサルタントも上司も中小企業の社長もそうですが、新しいアイデアを生み出す必要があるのであれば、それが生まれるスペースを用意する必要があります。そしてそのスペースで展開される事象がたとえ自分の理解の範疇を超えていたとしても、法律や会社のルールを逸脱しているといった余程のことがなければ許容すべきと思います。そして、言い方は悪いですが、「泳がしてみる」。泳いだ結果が大したことにならないケースも多々ありますが、泳がされた本人にしてみれば、自分の能力を発揮したり、限界に挑戦したり、何らかの問題を解決した達成感を味わったりと、悪い気分にはならないはずです。

アメリカ文学に詳しい方なら、J.D.サリンジャーの名前を聞いたことがおありになると思います。名作「ライ麦畑でつかまえて」をご存知の方も多いでしょう。大学時代に米文学を専攻していた私はサリンジャーが好きで、中でも気に入っていたのは「大工らよ、屋根の梁を高く上げよ」というマイナーな作品。

この不思議なタイトルの意味は、スケールの大きな人を住まわせるには、屋根の梁を高く上げて、その思考と行動の全てを許容する、ということと理解していました。

屋根の梁を高く上げて、大きなアイデアを育てるスタンスに立てるかどうか。ぜひ一緒に挑戦しましょう。


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